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小松空港(つづき)
山中温泉のその目指す宿に着いた。静かにその宿は佇んでいる。橋を越えた通りにある入り口から木々に覆われた玄関が見える。車寄せに着くと、仲居さんがすでに待っていて迎えてくれる。車を降りて玄関を入ると、その先に小ぢんまりした式台がある。よくある大旅館のスリッパが並べられているようなところとは違った、そう個人宅の玄関のようでもある。だから家に帰ったような気持だろうか、「ただいま」と言ってしまいそうでもある。スリッパといえばこの宿にそのスリッパがないのだ。裸足で宿の中を歩きまわれるようにという宿の願いと聞く、つまり自宅のように過ごすことが出来ると言うことだ。

さて、その日の部屋に案内された。「鍵はございませんので」と言われ、うち鍵はあるのだが、その、外から掛ける鍵はないという。鍵なしでも何ら問題ないのだろう。何しろ自宅なのだから。まあ、気楽といえば気楽だ。鍵を室内に置いたまま出かけても大丈夫だ。聞くとこの宿は全10室。お風呂は二つで、そのうちの一つに露天が併設されている。その二つは朝と夕に男女が入れ替わり、両方の湯を楽しめるのだ。夕餉までまだ時間があるので、早速浴衣に着替え風呂場へと直行した。

何しろ小さな宿だから、風呂まで約1分か、男湯に入った。誰もいない。脱衣所で浴衣を脱ぎ、そのまま湯殿へ。そこは宿の脇を流れる川沿いにあり、天井までのガラス窓を通して川の向こうの山を覆う新緑が目に飛び込んでくる。美しい。と感激しつつそのまま湯船に身を沈める。少し浅目のタイル張りの湯船には脇の湯口から熱めの湯が少しずつ落ち、ほど良い加減の湯が脚を伸ばして丁度良く肩ほどまで浸かれるように工夫されている。ゆっくりと入れる“ゆ”、かな。目の前に緑が広がり、かすかに川の瀬音が聞こえ、山の稜線を抜けて陽の光がこぼれる。自分の世界の中に浸る、とはこのことなのだろうか。いまでは覚えていないが、昔、この世に生を受ける前にいた母親の胎内にいる感覚に近いものを想像した。(つづく)
# by chateau_briand | 2013-06-01 15:23
小松空港
最近、何回か小松空港を使った。最初は、ギャラリーのお客様に案内されて石川県山中温泉へ行った時だった。羽田から約1時間、あっと言う間の飛行だ。空港に旅館の方が迎えに来られていて、車で温泉へ。少し早いので、近くの名所を見学することになった。ついでに昼飯も。昼は、山中温泉近郊のイタリアン。なかなかの味であった。その後、食後にこれも近郊にある魯山人の寓居跡へ。なんでもこの地に半年ほど暮らしたとか。ミニ美術館になっている。やはり、魯山人の匂いがする空間だった。思い掛けず観光旅行風になり楽しかった。たまにはこうした観光も良いものだ。なにしろ、昔から旅というと仕事がらみの場合が多いので。その後、車で旅館まで送ってもらい、夕方宿に着いた。

山中温泉というと、昔、まだアメリカで仕事をしていた時に、POS販売店の関係者を連れて日本へ来たことがあったが、その旅程のなかで、日本の工場側が山中温泉への小旅行を企画してくれたことがあった。1980年代の半ばだったろうか、京都からバスで向かった。まだ、2月ごろだったか、雪模様の寒い日だった。バスは当然暖房が入っていて、私には心地よかったのだが、販売店の連中から「暑い、暑い、冷房をいれてくれ」と言われてしまった。何しろ、肉しか食べていない連中で体熱が高いのだ。しかたなく、一応お客様なので、バスの運転手に暖房を冷房に切り替えて貰った。内心、この野郎め(失礼)と思いつつもここは我慢して山中へ。そういえば、小学唱歌に「今は、山中、今は浜」と歌ったな。温泉についてそれぞれ部屋割りがあり、私は、その販売店の社長と相部屋となった。これも、日本側の配慮で、一応、私がPOS部の責任者ということで、そういう外交儀礼なのだろうか。ところが、その社長は、「トムさん、大きな部屋で寝てね、私は横の部屋で」という。
「まあ、貴方はゲストだから大きいほうで」といっても聞かない。よくよく聞いてみると「実は、いびきがひどく」と大きな体に似合わない小さな声で私に説明してくれたのが楽しく思い出された。

少し脱線したが、その旅館はとにかく有名店として知られ、誰もが、というか、温泉好きにとっては知らない人はいないほどだとか。(つづく)
# by chateau_briand | 2013-05-17 10:45
旅の夢
昨夜、夢の中で旅をした。初めての経験だった。これまでいろいろな夢を見ることはあったが、ほとんど覚えていない。目が覚めると夢の内容を忘れてしまっているのだ。だから、昨日の夢を覚えているということは不思議なことだ。だが、その内容については、残念なというより複雑な気持ちになってしまった。その夢とは、

海岸沿いにある旅館に行っていた時のこと。朝、その旅館を立つ時に迎えの車を待っているのだが、時計をみると、私は普段時計を持っていないのだが、約束の時間まで15分ほどあった。そこで、私はちょっとそこまでと散歩に出かけた。その海岸から後ろに崖が見えたので、そこを登ったのだ。登ると眼下に海があった。で、その崖の上にある小路をしばし歩いていたが、すでに約束の時間になっていることに気づき、あわてて海岸へ降りようとしたが降り口が見当たらない。さっきの登ったのにと、その小路を行ったり来たりしたのだが、本当に下への道がなかった。すると、一軒のレストランがあった。そうだ、このレストランの人に聞こうと、中へ入った。その店は観光地にあるような作りで海岸に向いてガラス窓があり、海が望めた。海が見えたので、店の人に「降り口は」聞くと、「ありません」。「え、だけど、私は下から登ってきたのですが」と言うと、「登ることはできません」とはっきり言う。これには困った。まるで話にならない。だが、時間は過ぎて行く。旅館では私を探していることだろう、本当に困った。

困ったなと思っている時に夢から覚めた。覚めたが、あれから私はどのように旅館に辿り着いたのだろうかという疑問が残った。この夢の続き、いつ見られるのであろうか。
# by chateau_briand | 2013-04-30 13:37
食への道 =はまぐり=
春になると、勿論桜の季節だが、私には“はまぐり”だ。毎年、待ち遠しい。で、桑名へ行く。ここで食べる“はまぐり”は本当に旨い。昔は、ここに舟津家があり、長江に擬せられた木曽川、長良川、揖斐川の河口を眺めながら、古き良き時代を思い起こさせる座敷で焼き立ての“はまぐり”を食べるという至福の時間があった。が、3年前にその舟津家が閉店となり、それ以降は“はまぐり”を求めて苦難の時をさまよい難儀した。その後、桑名市内の料理屋を訪ね、あの味を求めたが、いまだ巡り合えないでいた。それが、桑名在住の陶芸家から、“はまぐり”で良い店があるが行かないかとお誘いを頂戴した。丁度、隣町の四日市へ行く用事もあり、渡りに船でお伴することにした。そういえば、あの舟津家は、旧東海道の船宿だったが。

その店は予約が難しいとか、去年の暮にはその陶芸家は予約を入れたらしい。だから、その日を外すことはできない。あらゆる予定をその日に合わせて取り決め、まさに万象繰り合わせての参加となった。この時期は、私のとっては不可思議な季節で、体調がややすぐれない。木の芽どきといわれるようだが、鼻から喉の調子が今一つになる。「それは花粉症だ」といわれるのだが、私には花粉症はないとこれまで信じていたので、この信念は変えられない(?)

それで、当日、四日市の澄懐堂美術館での打ち合わせを終え、桑名へ向かった。駅前からタクシーに乗り、目指すその店の名前を告げると、「ああ、」と運転手が言いながら車を発車させた。ほどなく、その店の前に着き、車を降り、店の中へと進んだ。もうその陶芸家は座敷に待っていて、我々の為の設えができていたのが見えた。鍋が二つあった。そうか“はまぐり”の鍋なのだ。見ると“はまぐり”が鍋の隣で山になっていた。4月とは思えないほどの寒いその日だったが、鍋で暖かに、熱燗を頼んだのは言うまでもない。この詳細は別に記すことにして、このあたりでごきげんよう。
# by chateau_briand | 2013-04-23 16:13
四日市への旅(澄懐堂美術館)その6
3月にはいってすぐの土曜日に四日市へ行った。澄懐堂美術館の理事会が開かれたからだ。去年6月に私が理事に就任してから2回目の理事会で、今回は4月からの新年度の予算等が話し合われるという。それと、新しい法律で、これまでの財団法人が一般財団法人へと移行するので、その手続きでの理事会なのだ。一般財団法人というのは、いってみれば株式会社のような財団で、公益財団法人とは少し趣が違う。まあ、必ずしも公益性がなくても良いらしい。これもすこぶる微妙なところだ。

この日は、1時半からの会議で、いつもの“呼月”で昼食というわけにもいかず、近くの都ホテルの中華料理店に入った。お昼の献立から焼きそばを注文し食べた。なかなか美味しかった。東京で食べるよりも割安でより美味しい。これは本当に助かる。お昼に変なものを食べることには抵抗があり、その日のすべてを無に帰すというのはちょっと大げさだが、それほど、食べることは、私にとっては大事な行事なのだ。おかげで、理事会にも気持ち良く出席できたが、その内容というのはここで書くのも憚られるようなことであった。近いうちに詳しく書いてみたい。まるで、ドラマのような筋立てだった。お楽しみに。

ちなみに、澄懐堂美術館の公式サイトができたので。http://www.chokaido.jp/
興味のある方は是非ご覧ください。
# by chateau_briand | 2013-03-12 15:04